多くの牛と豚の尊い命が亡くなりました・・・多くの人間が心を痛めました・・・しかし宮崎は再び歩き始めます

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(軌跡7)宮崎子牛育成日記

約1年前に、全ての牛がいなくなった牛舎。この地で人工授精された牛達がついに分娩のときを迎えました。ワクチン接種によって全ての家畜を失って、心が折れてしまいそうだったあのときからやっと、この時を迎えました。
この地で人工授精された子牛の出生は、農家にとって格別の喜びとなっています。


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【陣痛期の牛】 
再導入された牛は、育成牛とよばれる初めて繁殖に供用される牛がほとんどです。分娩は陣痛で開始します。ヒトでは、経産婦と比較して初産婦で陣痛の時間が6倍時間もかかると言われています。牛もヒトと同じです。突然の陣痛という腹痛を生まれて初めて経験しながら、分娩が開始されるのです。
 この時ばかりは、普段は食いしん坊の牛も食べることをやめ、牛舎の中をウロウロと歩き回ったり、立ったり座ったりを頻繁に繰り返したりして、落ち着きません。


2 一次破水
【一次破水】
 やがて、陣痛は腹痛から、周期的なお腹のハリへと変化し、いきむという行動が始まります。
 牛がいきみ始めると一度目の破水があります。一度目の破水は、尿膜が子宮から出てきて破れ、中を満たしていたサラサラとした尿膜水が出てくることによります。


3 二次破水
【二次破水直前】
 一度目の破水が終わると間もなく、いよいよ胎子の2本の蹄が白い膜に包まれた状態で、見え始めます。羊膜に包まれた胎子は前肢から生まれてきます。ヒトがちょうど万歳をしたような体勢で生まれてくることが多いです。


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【二次破水】【娩出期の牛】

 この状態がしばらく続き、一度目の破水から30分から数時間後に二度目の破水が起こります。胎子が産道に進入し、両方の肢と頭が産道を通過するとき、母牛の陣痛といきみは最高に達します。
 普段は、痛みにとても耐える牛ですが、初めての分娩では痛みに耐えかねて鳴き声を出す牛もいます。
 陣痛開始からここまで数時間。特にはじめて分娩する牛にとっては、また、それを見守る農家にとっても、長い時間です。


6 リッキング
【リッキング】
横たわって分娩をしていた母牛は、産み終わるとすぐに立ち上がり、子牛を強くなめ始めます。この行動をリッキングといいます。このリッキングはとても重要な行動で、子牛に対するマッサージ効果はもちろん、フェロモンを通じた親子の結びつき、反芻胃の中の微生物の受け渡しなど、いろいろな効果があります。


7 初乳を飲む
【初乳を飲む】
生まれた子牛は、早い牛では15分、おそくとも1時間ほどで立とうとします。生まれてはじめて立つのは、容易ではありません。何度も転びながら、数回目のトライでやっと起立することができます。人間の子供が約1年かけてやることを出生後すぐにできるようになるのです。
起立できるようになると、母牛の乳を探し始めます。乳にたどり着くまでに胸元を吸ってみたり、母親の下腹部をよろよろとした足取りで探し歩いたりします。やっと乳にたどりつき、初めての乳である初乳を飲みます。初乳は特別な乳で、子牛が病気に負けずに生きていくために大変重要なものです。


8 胎便
【胎便】
子牛が初乳を飲むと数時間後に、生まれてはじめての便をします。この便は胎便といって胎児期に母体内で羊水を飲み込んだりして、胎内でできたものです。母牛によっては、この胎便を食べてしまうこともあります。匂いがほとんどしない、ブツブツした便で、初乳を飲むことでこの便が押し出されてきます。


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【胎盤排出】【胎盤】

子牛が初乳を飲み終わるころになると、母牛は胎盤を排出します。人間の胎盤とは、形態がずいぶん違っています。たくさんの宮阜といわれるほぼ円形の部分がある胎盤をしています。
子牛をなめながら、子牛に初乳を与え、胎盤を排出する…母牛にとっては、1年に1回の大イベントです。


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【胎盤を食べる牛】
胎盤を全部排出し終わると、母牛はそれを食べ始めます。羊水がついたワラなども食べてしまいます。人間に飼われていても、牛の本能が残っているのでしょう。分娩の痕跡を消そうとするように、必死に食べようとします。牛は草を食べるように歯が進化したので、胎盤を食べて飲み込むときは、とても苦労しているように見えます。なんとか奥歯にもっていき、ほとんど丸呑みのようにして、大きな胎盤をすっかり平らげてしまいます。


12 牛の親子
【牛の親子】
陣痛期から始まった牛の分娩は、このような過程を経てひと段落です。母牛はここまで、数時間がんばります。見守る農家も、一つ一つの課程が順調にいっているか見守ります。
ひと段落ついたとき、新生子牛の横にゆっくりと腰をおろし、休む母牛の姿は、命をかけて臨んだ分娩をやりとげた達成感に満ち溢れているような気がします。


13 新生子牛
【新生子牛】
平成23年7月8日に生まれてきたこの女の子牛は「なお10」と名づけられました。お父さん牛は「福之国」号です。
この地で、人工授精されて分娩された子牛です。

一年前の今頃、ワクチン接種を受け入れたときにも、この子達と同じような子牛もたくさんいました。まだ、へその緒も乾かない子牛を処分せざるを得なかった悲しみは、未だに癒えることはありません。
命を育む現場では、生まれてくる命をただ喜び、死を悲しみ悼むという、むき出しの感情が渦巻いているように思えます。


※番外編
14 グラフ
【グラフ 中部管内の人工授精頭数の推移】
口蹄疫の発生に伴い、宮崎県内では牛に対する人工授精が約3ヶ月間中止されました。
馬、めん羊、山羊のような他の家畜や、犬、猫のようなペットにみられるように、季節にその繁殖性が強く影響される動物と異なり、牛は1年中繁殖が可能です。3ヶ月間の人工授精停止にともない、宮崎県外からの妊娠牛の導入を除いて、2月から4月の分娩は、なくなってしまいました。
また、これまでは月ごとにほぼ均等に子牛が生まれていましたが、5月から7月にかけて、牛の分娩が集中することになりました。
繁殖農場では、牛の分娩はうれしい反面、心配もつきまといます。分娩予定日の前に産む牛もいれば、超えて産まない牛もいます。農家では牛がいつ産気づくのか、お産が始まってから経過は順調か、子牛は生きているだろうか、五体満足だろうか、と大変気をもむものです。
分娩は、日中とは限りません。夜中も何度も起きて観察されています。多頭飼育農場では、分娩監視システムのようなハイテク器械を導入するケースもありますが、ほとんどの生産農場では、飼育者が夜中も見回りで観察しています。命を扱う現場とは、24時間稼動しています。
獣医師は、その農家の気持ちを知っているからこそ、夜中の難産でも強い使命感を持って出動できるのです。難産でも母子ともに健康で命があれば、すべての苦労は吹き飛ぶものです。
牛は、1年1産が理想の状態だとされます。今回の分娩ラッシュで出産した母牛たちは、またもや7月から8月にかけて人工授精されることになるでしょう。口蹄疫による影響は、子牛競り市の上場頭数のみならず、今後数年間にわたって、宮崎県内の子牛の出生頭数に強い影響を及ぼすことでしょう。

| 09:19 | コメント:2 | トラックバック:0 |

コメント

「宮崎子牛育成日記」の内容は、畜産農家の方はもちろん、一般の方にも、和牛生産の過程を知っていただくのに、とても役に立つものだと、感心しています。
病院でいのちが生まれ、病院でいのちが終わる事が増えた現代、ヒトは、いのちの本当の姿(どう生まれどう死んでいくのか)を目にすることがなくなり、いのちを軽んじる行為が増加しているのかもしれない…などと考えてしまいます。

出産の一連の流れの写真を、子ども達に見せたいものです。
研修会なんかで使っちゃっていいですか?

| しろぞろ | 2011/10/21 18:14 | URL |

勉強になりました。

びっくりです。家畜として飼われている牛さんが胎盤を食べる所を初めて見ました。
すいませんmilkhouse17です。
北海道ではスタンチョン飼いも大きくフリーストールだとしても子供とすぐ離れてしまうので食べることは少ないです。
勉強ななりました。

自然界の理にかなっていますね。

| しずく | 2011/12/07 09:30 | URL | >> 編集















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