多くの牛と豚の尊い命が亡くなりました・・・多くの人間が心を痛めました・・・しかし宮崎は再び歩き始めます

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(軌跡9)宮崎子牛育成日記

出生した子牛は、ぐんぐん成長していきます。子牛セリ市に出荷されるまで、いくつもの課程を経ていきます。農場では、成長する子牛にあわせていくつもの作業が行われています。
雄の子牛は、生後4~5ヶ月で去勢手術を受けます。セリ出場に向けて数度目の痛い試練です。ただし、今回の試練は雄に生まれたがゆえに発生する痛い痛い試練です。


①
【雄子牛の陰嚢】
 牛などの反芻動物の精巣は、写真のような位置にぶら下がるような形で存在しています。出生直後は、まだ陰嚢内に精巣はありません。生後1ヶ月以降で陰嚢の中に精巣が移動しておさまるようになります。


②
【手術の様子】
子牛はしっかりと柵などにロープで繋留されます。子牛を倒して四足をロープで縛るときもありますが、子牛を立たせたまま手術することもあります。飼主は子牛を前の方で、声を掛けてなだめながら補助します。
 後ろあしの間をしっかりと洗って、イソジンなどで消毒して手術を開始します。手術の時間は5分程度であっという間ですが、子牛にしてみれば、後にも先にも経験しない痛い時間です。手術が終わると出血がないか、再度確認して子牛を牛舎内に放します。殿方は、牛に生まれずに人間に生まれてよかった、と思う瞬間ではないでしょうか?
 畜産の世界では、ほとんどの雄は去勢されて、一部の限られた雄が繁殖用に供用されています。牛も例外ではなく、種雄牛となるのは、ほんの一握りの雄牛で多くは去勢手術されて肥育されています。去勢されると性質が穏やかになり、精巣から多く分泌されているテストステロンが少なくなるため、筋肉質な体質から脂肪を蓄えやすい体質に変化するのです。人間が食したときの価値をあげるためにも去勢手術が必要なのです。
 獣医師は、さまざまに工夫を凝らし、いかに清潔に行うか、苦痛な時間が短くて済むようにできるか、がんばっています。口蹄疫終息宣言後、発生地域周辺では自粛していた去勢手術が一度に集中し、獣医師は去勢手術に明け暮れました。
 私たちの食べる畜産物は子牛や子豚のころ受ける去勢手術のような試練を経て生産されているのです。


③
【摘出された精巣】
 摘出された精巣は、写真のように表面に精巣動脈という血管が張り巡らされています。この血管は引き伸ばすと7mにも及ぶ大変長い血管です。清潔かつ的確な手術が求められる理由はここにあります。大出血なんてことにならないように、手術するのです。


【離乳】
 自然哺乳で育てられる子牛は、生後3~5ヶ月程度で離乳されます。自然界であれば、1歳近くになるまで、哺乳する動物ですから、畜産の世界では大変早くに離乳していることになります。
 栄養価の高い固形飼料を子牛に食べさせることで離乳を早くすることが可能になったのです。しかし、母牛の乳はある日、急に止まるものではありません。自然のままであれば、まだまだ子牛に乳を飲ませるために乳房が張りますから、大変痛い思いをしていることでしょう。離乳すると、たいていの母牛は、がんがんに張った乳房をして、子牛を求めて、とてもとても大きな声で泣き叫びます。1年の中でもこれほど母牛が鳴くことはめったに無いことです。
 私自身も、わが子に乳を与えるまで、分からなかった痛みですが、乳房炎や離乳というのは、とても痛く辛い経験であると分かりました。
 子牛も固形飼料を十分に食べていない状態で、離乳されると、母牛を求めて泣き叫びます。声が枯れて出なくなるまで鳴く子牛もいます。非常に強いストレスを感じて、一時的に痩せてしまう子牛も居るほどです。
 このような状況を見るに付け、せめて、子牛がしっかりと固形飼料を食べる状態にしてから離乳すべきであると強く思うようになりました。


④
【鼻環】
  離乳が済むころ、子牛には鼻環が装着されます。写真のような金属製のものや、プラスチック製のものがあります。雄であれば、やがては1トン近くになる牛をこの小さな道具を利用することで、コントロールするのです。
 闘牛などでも鼻一つで牛をコントロールしています。
 古来から、人間は牛という大きな家畜をコントロールする最後の頼みの綱として鼻環を利用してきました。家畜の中でも、常時このような道具をつけている家畜は他にはいません。体が非常に大きくなる家畜であるがゆえの道具といえましょう。


⑤
【鼻環装着の様子】
 金属製の鼻環は、写真のような専用の道具で鼻に穴を開けてから装着します。子牛はとても痛がります。去勢では鳴かなくても、この器具で穴をあける瞬間はウヲーっと大きな声でなく子牛も居るほどです。出血も伴いますし、骨に近い場所を穴を開けてしまうとしばらく痛みで餌を食べなくなる子牛も居ます。


⑥
【鼻環装着した子牛】
 鼻環が通ると急に大人びて見えます。幼い顔つきだった子牛が急に変身したかのようです。鼻環は通常はぶらぶらしてどこかに引っ掛けたりしないように、ロープで耳の後ろにくくりつけておきます。
 いざという時だけに鼻環は引っ張られて威力を発揮します。


⑦つめ切りの様子前肢
【つめ切りの様子前肢】
 子牛の時期に1度、削蹄というつめ切り作業をします。農家の方がする場合もありますが、プロの削蹄師が行う場合が多いようです。牛の蹄は大きな体重を支える割に面積が非常に小さく、蹄の手入れは大変重要なことです。2年に3回程度の割合で、大人になってからも削蹄を行います。
 前肢は、写真のように抱えて削ります。専用の削蹄鎌という道具で削ります。人間の爪と同じで、切りすぎると血が出ますし、生爪の状態はとても痛いものです。そんなことにならないように、1~2mm程度の厚さで、少しずつ削り進めていきます。


⑧つめ切りの様子後肢
【つめ切りの様子後肢】
 後ろ肢の削蹄はとても神経を使います。牛の唯一といってもいい攻撃手段は、強力な後肢蹴りです。馬のように噛み付くことや前肢でチョップすることはありませんので、後肢を非常に広範囲に蹴ることで敵を攻撃します。
 その後肢を抱えて蹄を削るわけですから、非常に神経を使います。写真では子牛ですが、成牛でもプロの削蹄師では、枠場という牛を入れる柵を利用せずに削ってしまわれることが多いです。本当に頭の下がる大変な仕事です。削蹄師とは本当にかっこいい仕事だと思います。


⑨やすりがけ
【やすりかけ】
 蹄を削ると、人間と同じでやすりをかけます。人間のやすりとは程遠いとてもごつごつとしたやすりです。これで仕上げです。蹄一つで牛の価値が少しあがるほど、蹄というのは、牛を判断するときの材料の一つとして売買の際にはよく観察される場所です。


⑩毛刈りの様子1
【毛刈り1】
 子牛セリ市の前や、子牛品評会の前には、毛刈りも行います。入念にシャンプーをして、毛を十分に乾かしてから行います。かみそりに櫛を当てて、少しずつ刈っていきます。特に背中は入念に行います。


⑪毛刈りの様子2
【毛刈り2】
 牛の体の前半分が終わると後ろ半分です。尻尾まで整えます。乳牛では、黒白の模様があるため、バリカンで全身を刈って、斑紋をくっきりと際立たせますが、黒毛和種は全身真っ黒なので、体の輪郭を際立たせるように毛を刈る場合が多いようです。


⑫仕上げのブラッシング
【ブラッシング】
 一連の手入れが終わると入念にブラッシングを行います。ブラッシングも人間のブラシとは違って、金属製の道具や、大きなハケのような道具を用います。ブラッシングは、牛は大好きです。
牛は気持ちいいときはじっとして頭をぐっと下げて動きません。尻尾を少し持ち上げて、動かずにじっとしているときはもっとブラシをかけて欲しいときです。この様子は牛同士がお互いを舐めあうリッキングの時にもよく見かける光景です。
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