多くの牛と豚の尊い命が亡くなりました・・・多くの人間が心を痛めました・・・しかし宮崎は再び歩き始めます

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(軌跡4)宮崎子牛育成日記

口蹄疫で被害にあった頭数は、牛豚合わせて28万8,643頭といわれています。この頭数の中には、お腹に子供を宿した母牛や母豚も多く含まれていました。胎子はこの被害頭数の中に含まれませんでした。しかし、実際には母親の胎内で大切に育まれ、この世に生まれようとしていた命もたくさんあったのです。  母親の絶命とともに絶たれた小さな命は、その数を数えられることもありませんでしたが、実際には、母親の命以上に多くの頭数が存在していたのです。

 前回の人工授精から数十日が経過し、口蹄疫で被害にあった農家の家畜のお腹の中に、小さいけれど大きな希望の光となる胎子が宿りはじめました。


エコー
エコーの機械

 大動物の診療で使用される超音波診断装置はどんどん小型化し、中にはカラードップラーを搭載したものや、画面をリストバンドのように腕に巻きつけて使用するものや、直腸内に挿入するプローブが指先につけるだけのものなど多くの機種が開発されて使用されています。
 医療の世界では、患者さんが病院に行って診察を受けるので、多機能で大型の機材を用いて診察することが可能ですが、特に大動物を診療する獣医師は、患畜(=患者)のところに行って、診察をしなければなりません。
機械はコンパクトで持ち運べるものでないと診察に実用することは出来ません。今回は、このエコーを使って牛のお腹の中の赤ちゃんの様子をのぞいてみます。


①30日齢子宮腔
30日胎齢の胎包

人工授精から約30日頃の子宮の様子です。黒い丸が右側に、ドーナツのような丸が左側に並んでいます。これはそれぞれ左右の子宮角を示しています。右側の黒い20mm程度の丸が胎児を包む<胎包>といわれるものです。この中に、まだ1cmにも満たない小さな胚が居るのです。赤ちゃんの様子は、頭と肢の元になる肢芽がある原始的な状態です。
牛と人では子宮の形や機能が異なりますが、胚から胎子になる原始的な赤ちゃんの様子はそっくりなものです。人間のお母さんでは、前回の生理から数えて妊娠週齢をいいますので、人間ならば、妊娠第6週~7週というところです。


②40日齢胎子
40日胎齢の胎子

 40日頃になると胎子の姿がとらえられるようになります。大きさは15mm程度です。30日頃では、右側の子宮角だけが黒い丸のようになり中に羊水などの液体を溜めていましたが、左側のドーナツのような丸だった子宮角にも同じように黒い丸になり羊水などの液体を貯留し、子宮がたった10日間でどんどん変化していっている様子が感じられます。
 

③40日齢胎子 カラードプラ
40日胎齢胎子のカラードップラー

 40日齢の胎子の様子をカラードップラーで撮影すると、心臓がバクバクと元気よく鼓動し、赤く色がついて観察されます。人間のお母さんならば第7週~8週のころです。人間でも同じように、胎児の心臓の動く様子を、カラードップラーを利用して検査します。


④50日齢胎児全身
50日胎齢の胎子

 50日頃の胎子と片側の子宮の様子です。子宮の直径も5~6cmほどになり、赤ちゃんも50mmほどに成長しています。このころになると、体や肢の区別が付くようになります。運がいいとちょこっと動く様子がみられることもあります。
 お母さん牛は、人間と違ってつわりの症状がありません。もしかしたらあるのかも知れませんが、健康な牛はいつもお腹をすかせているかのように、よく食べ、よく反芻します。人間のお母さんならば、つわりがつらいころではないでしょうか。


⑤3ヶ月胎児頭部
3ヶ月胎齢の胎子

 3ヶ月頃の胎子の様子です。画面の1メモリは1cmに相当しています。胎子の全体の大きさは15cmほどになり、画面の下半分に赤ちゃんの顔を右側から見ています。骨のように硬いものは真っ白くうつりますので、おでこの丸みがヘルメットのように白くうつっているのがわかります。この頃になるとちょろちょろと動き回り、撮影中に画面からすっと居なくなることもあります。かわいらしいですね。
 男の子か女の子かを知る性判別が出来るのはこのころまでで、へその緒から生殖結節までの距離で雌雄判別を行います。

牛の赤ちゃんの大きさは妊娠月齢からある程度推定することが出来ます。妊娠8ヶ月までは、妊娠月齢に妊娠月齢+2をした数字を掛け算することで推定できます。妊娠3ヶ月ならば15cm、妊娠4ヶ月ならば24cmという具合です。


⑥
宮崎大の獣医学科の学生と先生

 口蹄疫の被害にあった宮崎県には宮崎大学という多くの獣医師を輩出する名門大学があります。宮崎大学では、小動物(犬・猫など)の獣医師や公務員などはもちろん、大動物(牛・豚・馬など)を診察する獣医師も多く育てています。
今回、ワクチンによる被害を受けた地域には、未来の名獣医師を育てるため、繁殖検診巡回を受け入れておられた農家の方々がおられました。全国で活躍する獣医師の一部分は、このように宮崎県の畜産農家が育ててくださっているのです。


次回は、牛の食べ物や消化の様子について掲載予定です。
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